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雪解けの北の春にて
あたたかな部屋に隠れたり
厳格頑固なる若き兄の元
消される宿命の命密かに身篭りて
すすめられたる酒の匂ひに咽たり
清しい街の中ひとり彷徨い
場違いな吐き気を感じ蹲る
死を賭す愛は激しく薄れつつ
事知らず兄は我が体躯を労われり
失望と怨恨の内に望み無き苦痛に撃ちのめさる
野太き男は金差出しため息吐くのみ
風舞う兄の広大なる学舎歩きまわり
明日死のう今日死のう明後日死のう
天罰得るべき己はしぶとく
天賦ある兄は疾うに夭折せり
父たる慈愛我に与へし
深き知性と可憐さを求めたり
月日経て愚かなる我は再びすべて失い
縋るもの無き汚濁の街を彷徨い
兄の懐に帰らむとや
知らぬ年嵩の雄にい抱かれぬ
望みは最早無かりけむ
天仰ぎても聖水は濁りたる
路上舞う塵にも似る意味失いたる心
舗装されし乾きたる道
霧の中にて山さへも見ず
裏ぶれて人眺め橋に佇む
目覚めれば可愛げなる男(お)の子
邪気入る隙無い清い眼(まなこ)持つ
するすると背は伸びて腕長し
失望に震える我が身い抱き寄す
「悪しき夢は今去れり」
男(お)の子は曰く落涙に咽び
我が髪白き手で撫でたる
かつて知らぬ埃のみの街にて
その儘手を取りて山目指し道定む
足取り重き我を振り返り待つ様
雅な音成し眼前にあり
恩寵はすでに顕れたり
憩いは内に在りと示したる
「君知らず哉かつてその胎内に在りしを
我は憶ゆ遥かな北の風景
君が悲愴を共に負わむとせり
生まれいずるは総て其れなり」
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